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パビスタンプは日本の気候風土に似た地中海地方で生まれた建材です。日本の気候風土に非常に適した塗り壁材です。
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2009/07/21(Tue)

[その他] ●こころざし

〜 新作映画「剱岳 点の記」を観る 〜   師範塾塾長 占部賢志

久しぶりに映画館に出かけました。目下、全国で上映中の木村大作監督作品
「剱岳 点の記」を観るためです。これは新田次郎による同名の小説を映画化
したもので、日本地図完成のために、立山連峰に屹立する剱岳初登頂に挑ん
だ男たちの実話です。

時は明治40年、国防のために正確な日本地図を制作すべく、陸軍参謀本部陸
地測量部の測量手柴崎芳太郎を中心とするチームは、前人未踏の剱岳山頂に
三角点の石柱を建てることで、これまで地図上の空白地帯だったこの地域の測
量を目指します。

けっしてドラマチックな場面や心理描写が次々と展開するわけではありません。
淡々と登攀のための準備が進んでいくのですが、冠雪の立山連峰が舞台だけ
に、その壮大な白銀の世界、高山植物の可憐さ、目の前に広がる雲海の輝き
等々、息を呑むシーンが続くのです。

一方で、雄大な山々は過酷な厳しさが柴崎ら七人のサムライを襲います。突然
の雪崩に見舞われたかと思えば、行く手を遮る暴風が荒れ狂う。その千変万化
する自然の凄まじさ。そうした想像を絶する困難に直面しながらも、彼らは百キ
ロもの装備を背中に担いで悪戦苦闘の道なき道を拓いて行きます。

当時の山岳地帯にあって、声の届かない遠く離れた者同士は、赤白の手旗信
号を用いて意思疎通していたのだということも、この映画で再認識したしだいで
す。当節の携帯電話には少々うんざりしていただけに、手旗信号で成功を称え
るシーンは実にいいものでした。

とりわけ印象に残ったのは、役所広司扮する先輩測量手の古田盛作が暗中模
索する柴崎に宛てた手紙の一節です。届いた文面にはこう書かれていました。
「人がどう評価しようとも、何をしたかではなく、何のためにそれをしたかが大事
です」

この励ましの言葉を胸に後輩測量手は覚悟を決める。「何のために」という一句
には、ハッとさせられます。柴崎らにとって剱岳に登るのは初登頂の名誉を得る
ためではありません。この国の正確な地図を創らんがためだったのです。

時として私たちには邪念や名誉欲が生じ易いものです。この私など欲の塊と言っ
ていいほどの俗物に過ぎません。しかし、そんな凡人ではあっても、柴崎が古田
の手紙を読む場面にはやはり心が吸い寄せられます。オレは、何のために生き
るのか、何のために教壇に立っているのか、そうした自問自答を促される心地で
した。

「何のために」― それはほかでもない、公に向かう「こころざし」というもの。
柴崎チームはその一点に収斂してゆく。その思いは山頂に立った感無量の表情
にさながらに滲み出ていました。

撮影を終えた木村監督の言葉がふるっています。「友情なんかは割ともろいんだ
けど、志を一つにした仲間ってのは、強い絆で結ばれている」と。以上、がらんと
した日曜夜の映画館の片隅で、一人考え込んだよしなしごとです。


by vonsumaine | 2009/07/21 18:41:24 | その他 | comment(0) | trackback(0)
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