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パビスタンプは日本の気候風土に似た地中海地方で生まれた建材です。日本の気候風土に非常に適した塗り壁材です。
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2009/10/05(Mon)

[その他] ●いのちを未来に〜母からの贈りもの(12)

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            いのちを未来に〜母からの贈りもの(12)
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 〜 待てば来る「透き通る一瞬」 〜 賀久はつ先生(むなかた助産院院長)

和歌山県の護念寺に講演のために招かれたことがあります。厳しい冬が去り、
梅がちらほらと咲いていた時のことです。控室の床の間にあった色紙の言葉が
今も胸の奥に深く刻み込まれています。

「透き通る一瞬」
料理研究家が書いたそうです。大根やニンジンなどの煮物をする時、まだ硬いう
ちに調味料を入れても味は染み込みにくく、軟らかくなり過ぎてからでは味が濃く
なり、素材の持ち味を損ないます。大根やニンジンが透き通る一瞬に味付けをす
れば、少しの調味料でおいしくできる、という意味だそうです。

洞窟探検家のSさんは体が大きい人でした。奥さんはお料理好きで健康に気を
使い、妊娠後半は明るく充実した日々を送っているようで、何も心配する必要の
ない奥さんでした。

夏の終わり、素足にひんやりとした床の冷たさを感じるころのこと。いつものよう
に夫婦で散歩を楽しみ、スーパーで買い物をしていると、奥さんが下腹部の収縮
に気づきました。五分ごとにキューンとしてくる。

いよいよ始まりました。二人は急いで帰宅して、Sさんはおにぎりをつくり、用意し
ていた大きな入院バッグを持って、夫婦で助産院にやって来ました。

診察すると子宮口は五センチほど開き、児頭の下がり具合も良いようです。
私は「なんていいお母さん、なんていい赤ちゃん。助かるわ」と言いました。
Sさんは「おにぎりを作った僕を褒めないのか」と思ったそうですが・・・。

お産は三十代半ばとは思えないほど順調に進み、地面からわき出すようなエネ
ルギーとともに破水しました。

児頭がちらちら見え隠れするとき、私は頭が冷えないように温かい手をそっと当
て、「赤ちゃん、もう少しの辛抱よ。待ってるから元気で出てきてね」と語りかけ
ます。

すると、Sさんは「赤ちゃんじゃなくて、ヒカリちゃんと呼んでください」と言うの
です。
「男の子でも女の子でもヒカリちゃんですか?」と尋ねると「はい、そうです。暗い
洞窟に入って、一筋の光が見えた時、ああ生きて地上に帰れると思うのです。
この子は私の生きる光なのです」と。

Sさんによると、洞窟で狭い所に体が挟まってしまった時、前から引っ張ってもら
っても、後ろから押してもらっても傷つくそうです。そんな時はある呼吸の瞬間、
スーッと通り抜けることがあるというのです。

出産も同じです。大切な瞬間を迎えるために、産婦と支える人の深い信頼で次第
に無心になり、身も心もシンプルで無駄がなく、透明な空気に溶け込むようになっ
たとき、いのちの誕生です。

それは人と時間と空間が織りなす芸術のようであり、まさに「透き通る一瞬」だと
思います。

出産、子育て、教育、職場など人生のあらゆる場面で「透き通る一瞬」を大切にし
たいものです。   (西日本新聞「いのちを未来に」より)


by vonsumaine | 2009/10/05 11:06:57 | その他 | comment(0) | trackback(0)
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